2015年 年の初めに 9.Jan .2015
- 妻鳥 純子
- 2015年1月9日
- 読了時間: 7分
あけましておめでとうございます。 本年もどうぞよろしくお願いいたします。年の初めに、私の好きな詩を載せます。
Kennst du das Land, wo die Zitronen blühn aus > Wilhelm Meister < J.W.Goethe ヴィルヘルム・マイスターの徒弟時代より J.W.ゲーテ 「君よ知るや南の国」この訳は堀内敬三の訳で大変良く知られている。美しい言葉である。 ゲーテの原詩は3番まであるのだが堀内敬三の訳詩は アンブロワーズ・トーマのオペラ 「ミニヨンからのものであり、Connais-tu le Pays? は2番までの訳である。 このゲーテの詩には色々な作曲家が作曲していて、90曲程残されているそうである。 (http://members3.jcom.home.ne.jp/goetheschubert/mig.htm この渡辺美奈子さんのホームページに大変詳しく書かれている。)
Kennst du das Land (Lied der Mignon) aus > Wilhelm Meister < J.W.Goethe Kennst du das Land, wo die Zitronen blühn, Im dunklen Laub die Goldorangen glühn, Ein sanfter Wind vom blauen Himmel weht, Die Myrte still und hoch der Lorbeer steht? Kennst du es wohl? Dahin, dahin Möcht´ich mit dir, o mein Geliebter, ziehn ! Kennst du das Haus, auf Säulen ruht sein Dach, Es glänzt der Saal, es schimmert das Gemach, Und Mormorbilder stehn und sehn mich an: Was hat man dir, du armes Kind getan? Kennst du es wohl? Dahin, dahin Möcht´ ich mit dir, o mein Beschützer, ziehn ! Kennst du den Berg und seinen Wolkensteg? Das Maultier sucht im Nebel seinen Weg, In Höhlen wohnt der Drachen alte Brut, Es stürzt der Fels und über ihn die Flut: Kennst du ihn wohl? Dahin ! dahin geht unser Weg; o Vater, laß uns ziehn !
あの国をご存知(ミニヨンの歌) ヴィルヘルム・マイスターの徒弟時代より J.W.ゲーテ あの国をご存知、レモンの花が咲き 暗い葉陰に金色のオレンジが輝いていて 青い空から優しく風が吹いてくる ミルテは静かに月桂樹の背が高く聳えている あの国をご存知? そこへ、そこへ 私の愛する人、一緒に行きたいのです! あの家をご存知、円柱の上に屋根が憩い 広間は輝き、部屋はほのかに光っている 大理石の像が並び立ち、私を見つめ、訊ねる お前、哀れな子よ、人がお前に何をした?と あの家をご存知? そこへ、そこへ 私の護り人、あなたと共に行きたいのです! あの山と、その雲の道をご存知 騾馬が霧の中で道を捜していて 洞窟には竜の古いやからが棲んでいる 岩は崩れ落ち、その上に大水が流れ落ちる あの山をご存知? そこへ、そこに私たちの道がある、 お父様、一緒に行きましょう! (妻鳥純子訳)
この詩の発音分析をしたいと思う。私の頭の中ではこの詩を読んでいる時には Hugo Wolf の曲が流れている。
1) Kennst du das Land,wo die Zitronen blühn Kennst du の 発音で、tと d を Kennstdu と 促音化することは、コーラスでは決まりのようになっている…と教わった。が、歌手は、自分の芸術的意図を持って行う場合はKennst du と あらためてdu を発音してもよい…と言われた。(注1)
Zitornen blühn 何と美しい tsi と bl であろう。 bを発音する前に lを用意しておき 破裂音の Bは 上唇と下唇で 素早くb を発音する。 この二つの言葉の語尾の n は klingen lassen(響かせたままにしておく…で響かせるという意味とは少し違うことを認識したい。) でなければならない。ドイツ語の nは、 舌を硬口蓋の上につけるだけで、力は全く入れないで響いている。
Im dunklen Laub die Goldorangen glühn, m は上下の唇を閉じる。m n nk ng (η) は響く場所は同じである。dunklenの nkと その関連の ng は無声、有声の違いはあるが、ほぼ同じ場所で起きる。私は、コーラスや声楽のレッスンの発声練習の時に これらの子音を使ってKopfresonanz(頭声共鳴)の説明をすることが良くある。 n は、舌(Zunge)の上部を上顎に置いて発音する。 m は上下の唇を閉じて口の中を開け、鼻から息を通す。 nk , ng は n の発音の場所で舌を上顎から外し、息を通す。nk, ng の発音で、続くk , g を 新たに又発音するのは良くない…間違いだと思う。
die Goldorangen glühn glはg を発音する前に l を用意しておき、gとl の間に u が入ってはいけないのは当然のことであるが、注意したいと思う。
ein sanfter Wind vom blauen Himmel weht sanfter の s は Reibelaut(摩擦音) だが、stimmhaft(有声の) s で、胸声区の共鳴空間を広げ、Summton(ぶんぶんと鳴る)にする。 s にはstimmlos(無声)もあるが、それは後ほど書く。sanfter の f はstimmlos(無声の)。f を長く美しい無声で発音することによって「やわらかい」風の感じが出る。
vom blauen Himmel weht blauen では、綺麗な bl を 発音すること。ここでも b を 発音する前にl の用意をしておくことは大事。
Die Myrte still und hoch der Lorbeer steht? ここではstill 、hoch、 Lorbeerの発音に気をつけたいと思う。still の st の s はstimmlos(無声の)Reibelaut(摩擦音) である。子音のs を早めに、そして時間をかけて静かに注意深く発音することによって静けさを表現することができると思う。hoch[ ho:x ]高く、という意味だが、 o の発音は、母音の長音で、長音は暗く発音される。Lorbeer の o は明るく短い (一段目の右から8個目)の発音記号で表わされる。(国際音声記号)(注2)

Kennst du es wohl? 一番初めに書いたように Kennstdu と促音化して私は発音したいと思う。
Dahin, dahin Möcht´ich mit dir, o mein Geliebter, ziehn ! [da´hin ;指示的強調da:hin] (注3) 私は、指示的強調だと解釈している。 mit dir は、この場合は、「あなたと一緒に」という意味を出したいので、はっきりと分けて発音したいと思う。 ziehn の [tsi:n] 無声子音の z の時間を長くかけて発音したいと思う。
2) Kennst du das Haus, auf Säulen ruht sein Dach, das Haus この言葉に限らないのだが、「 歌と言うものは本当に困ったものだ……」と良く思うことがある。das Haus なのだけれど、das の a は短いのだが、音にはある時間が必要なので少し長く a を歌う。(決してアクセントではない。)そしてHausは [haus] 二重母音の au だが、2重母音の1つ目の母音をできるだけ長く発音して2つ目の母音を発音する。その時、a…au と、2つ目の母音を発音する前にもう一度a を言う。それに加えてこの最後の s は 聴き取られるようにしなければならない。auf Säulen の無声子音のf とReibelaut(摩擦音)の S を発音するには、お腹の緊張を保ち緩めることなく、その上鼠蹊部と尻の締まりが大変大事である。sein Dach のsein はsein[zain] で正しいのだけれど i は i まで行かず i の発音はメイリオ の1段目の右から3つ目のものになる。このような2重母音の時は気をつけなければならない。先程の Laub ,ein, blauen の2重母音の2つ目の母音もはっきりとは言わず、少し曖昧になる……と言った方がわかりやすいかもしれない。Dach の d は 上の歯の上に舌の先を引っかけるようにする。
Es glänzt der Saal, es schimmert das Gemach, glänzt der Saal は glänztder と私は促音化したいと思う。es schimmert 大変難しい発音である。es の 無声子音s の直後に sch [ ∫ ] が来る。これこそ、まことに鼠蹊部が重要なのだが、隠れた仕事をしているのだと思う。 [s ] [ ∫ ] が綺麗に発音できるようにと思っている。
Und Mormorbilder stehn und sehn mich an: stehn の [ ∫ ] 、sehnと an の n を klingen lassen して、語尾を締めたい。
Was hat man dir, du armes Kind getan? dir は 歌い手の私に呼びかけているものと思う。du の 言葉を、特にu を綺麗に発音したい。
Kennst du es wohl? Dahin, dahin Möcht´ ich mit dir, o mein Beschützer, ziehn ! (同上)
Was hat man dir, du armes Kind getan? dir は 歌い手の私に呼びかけているものと思う。du の 言葉を、特にu を綺麗に発音したい。 Kennst du es wohl? Dahin, dahin Möcht´ ich mit dir, o mein Beschützer, ziehn ! (同上)
3) Kennst du den Berg und seinen Wolkensteg? seinen 語尾の n を klingen lassen すること。 Das Maultier sucht im Nebel seinen Weg, この一文は大事な文だと思われるので発音記号で書いてみる。 In Höhlen wohnt der Drachen alte Brut, in Höhlenの所の n と h が続いているが、n をきちんとklingen lassen していないと h の 発音がうまくゆかない。
Es stürzt der Fels und über ihn die Flut: es の[s] と stürzt の[ ∫ ] をお腹の緊張を保ち、前方に吐くように綺麗に発音したい。
Kennst du ihn wohl? Dahin ! dahin geht unser Weg; o Vater, laß uns ziehn ! 同上なのだが、Weg [ve;k] とlaß uns ziehn のß 、uns の s 、 ziehnの z のRibelaut(摩擦音) の stimmlos(無声子音)を綺麗に出したい。
歌うにあたっては、この詩をまず朗読をする。予め、韻律のことを記しておきたい。Jambus5詩脚の4行、韻はaabbの男性韻であり、その後のフレーズはリフレーン(Kehrreim)がついている。リフレーンは2詩脚のJambus、2詩脚のJambusの後2詩脚のJambus の後3詩脚である。 (注4) ここで少し話しが逸れるが、朗読に関しての素敵な言葉を見つけているので引用する。「詩はことばの音楽である。感興や心に浮かぶ想いが、選び抜かれたことばの一定のリズムによって述べられる音楽である。だから詩というものは文字で書かれたものを目で見るだけでなく、声に出して朗読し、耳で聴かなくてはいけない。ことばの持つ音とリズムが大切なのである。」(注5)
------------------------ 注1、Pr. Uta Kutter 注2、国際音声記号 メイリオ 注3、Grosses-deutsch-japanisches W?rterbuch SHOGAKUKAN 1990 より 注4、赤井慧爾著 ゲーテの詩とドイツ民謡(南江堂)より」 注5、小塩節著 「ドイツ語とドイツ人気質」講談社学術文庫 ------------------------
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