BAYREUTH FESTSPIELHAUS Der Ring des Nibelungen 11.Sept.2014
- 妻鳥 純子
- 2014年9月11日
- 読了時間: 10分
( Festspielhausの正面にて) Das Rheingold 8月10日 18:00 Musikalische Leitung Kirill Petrenco Inszenierung Frank Castorf Bühnenbild Aleksandar Denić Kostüme Adriana Barga Peretzki Licht Rainer Casper Video Andreas Deinert Jens Crull (このメンバーは4日間とも同じ) Götter Wotan Wolfgang Koch Donner Markus Eiche Froh Lothar Odinius Loge Norbert Ernst Göttinnen Fricka Claudia Mahnke Freia Elisabet Strid Erda Nadine Weissmann Niebelungen Alberich Oleg Bryjak Mime Burkhard Ulrich Riesen Fasot Wilhelm Schwinghammer Fafner Sorin Coliban Rheintöchter Woglinde Mirella Hagen Wellgunde Julia Rutigliano Floßhilde Okka von der Damerau ラインの乙女達の歌声は大変美しかった。Wotan のWolfgang Kochはドイツ語の発音が抜群に良いと思う。Alberich は、とても良いと思ったのだが、友人は声を不自然に作っている‥という。 Fricka は、とても良かった。Fasolt、 Fafnerは共に悪くない。Erdaの Nadine Weissmannが、素晴しいアルトの声の持ち主で発音が良くとても感銘を受けた。Elisabet Strid のFreia は、大変動きの多い役どころだが、しっかりと演じ歌っていたと思う。 しかしながら、演出にかなり驚き、オペラを聴き終えたとき、まるで映画を見終えたような気がした。そんな馬鹿な言葉がオペラ鑑賞後に出てくるとは…心底驚いている。(…私が悪いのだろうか?)WotanがなぜFricka はともかくFreia とも一緒にベッドにいるのだろう? WotanがErda に対して、いまだに性的に気のある素振りをするのは何故?冒頭のラインの乙女たちの場面は、とある「Golden Motel」のようだ。回転する舞台(回り舞台というのだと思う)になっていて、ライン川を想定しているのか、水の入った子供用の日向で遊ぶようなプールがある。そこに、ラインの黄金が(よくわからないのだが)黄金色に輝いているようだった。ラインの乙女たちの場面の後、隣にしつらえられたラブホテルのようなところに、Wotan、Fricka、Freia 3人がベッドに居る。一連のFreia をめぐる、ドタバタ騒ぎがヴィデオを使って説明される。ともかく何のためのヴィデオ撮影か、観客を馬鹿にしているのだろうか、ともかく説明の多すぎる演出だと思う。かなり、ブーが飛んでいた。しかし、日本人の私などがブーなぞ言おうものなら、外国人が何を言う…と言われるのだろう‥・・・ Die Walküre 8月11日 16:00 Siegmund Johan Botha Hunding Kwangchul Youn Wotan Wolfgang Koch Siegklinde Anja Kampe Brünnhilde Catherine Foster Fricka Claudia Mahnke Walküren Gerhilde Rebecca Teem Ortlinde Dara Hobbs Waltraute Claudia Mahnke Schwertleite Nadine Weissmann Helmwege Christiane Kohl Siegrune Julia Rutigliao Grimgerde Okka von der Dameau RRoßweiße Alexandra Petersamer (1幕) Johann Botha のSiegmundは素晴らしいドイツ語の発音と声と演技である。Kwangchul Youn のHundingは、言葉がことのほか素晴らしくはっきりとしていて、素晴しいものだと思った。 Sieglinde のAnja Kampe は、かなり若いソプラノだと思うが、素敵なものを出していた。他の日本人の知り合いになった方と話をしていて、「Botha素晴らしいですね!」とこちらが言うと、「Bothaだって…Kampe が良いよなぁ!」と他の方々と呆れたように仰有る。彼は昨年もBayreuthに来ていて、恐るべき演出のことを私たちに話してくれていた。今年は、音楽の邪魔をしていない…とか、何とか…。人から聞く予備知識は私としては余り欲しくはない。 今回、Das Rheingold からGötterdämmerung までの4作品を通して、一番感銘を受けたのは、このDie Walküre であった。1幕の出来がかなり良かったのだと思う。(勿論ヴィデオ映像が沢山映されていた。)Kwangchul Youn の素敵さは特筆ものだと思う。 (2幕)Claudia Mahnke のFricka と Wotan のやり取りがとても素敵だった。Mahnkeの 歌は、言葉がはっきりとしていて、大変気の強い女性を演じていて、素晴しいと思った。 (3幕)Walkürenの 騎行の音楽にのって登場するが、なんという舞台、12メートルの高さがあると、批評には書いてあったが、Brünnhideは階段を下りながら歌ったり、大変な気遣いと労力と(大変危険で足場が悪いと思う。)のいる舞台である。しかしながら素晴らしい歌唱であった。 Wotanと Brünnhideの父と娘のやり取りを聴いていて、Brünnhide が、最後に炎に入ってゆくところをヴィデオで映しているのだけれど、聴いていて、視覚的なものをひときわ大事にしているように感じられ、こんな素敵な音楽が、場面の説明がヴィデオで随所にあり、落ち着いて楽しめなかったような気がする。 Kirill Petrenco の 指揮は、大変素晴らしいもので、ブラボーの嵐であった。 Siegfried 8月13日 16:00 Siegfried Lance Ryan Mime Bukhard Ulrich Der Wanderer Wolfgang Koch Alberich Oleg Bryjak Fafner Sorin Coliban Erda Nadine Weissmann Brünnhilde Cathrine Foster Waldvogel Mirella Hagen (1幕)普通オペラの内容を前もって勉強するものだ。私も遅まきながら、一夜漬けで知識を詰め込んだ。 ミーメが懸命に刀を鍛えている(…らしい)。彼は、教養がある(…らしい) ジークフリートが熊(…人間?)を連れて帰る。勉強したところによると、熊の筈だ。私には人間に紐を付けているように見える。(なんだ、これは?!)ジークフリートが追い帰すのかと思ったら、人間の様子の熊は舞台上にずっといて、あっちでこそこそ、こっちでこそこそ、ミーメの本を動かしたり、ひっくり返したり、運ぼうとしている。何だかわけがわからず、ギャグかとも思えるが、変なことをする、なんとも邪魔な存在であった。聴衆の気を散らさせすぎる演出!! さて、Siegfried と Mime は良い仕事をしていると思えた。Wolfgang Koch の Der Wanderer は相変わらずの素晴らしさだ。 (2幕) Siegfried は Fafner を殺し、Waldvogel が出てくるのだが、この小鳥は人の大きさで(これは、まさに人を食っているとしか思えない。)Siegfriedは小鳥の忠告を聞き入れ、ミーメを殺す。その後なんとSiegfriedは、小鳥をも恋人にする(なんということ!) 私は、 Waldvogel を歌った Mirella Hagen を 良いと思った。彼女はラインの乙女のWoglindeを歌っていた。批評では「彼女の本来の歌い方と違ったのではないか。それはわからないが、いずれにせよ彼女は神経質さと、不安な感じでいた、と思われる。しかし私はますます経験を積んで良くなると思う。(注5)」 (…演出が良くないのです!!と私は思う。) ----------------------------------- (注5)http://www.der-neue-merker.eu/bayreuth-siegfried-denken-verboten/print ----------------------------------- (3幕) ≪1場≫ とある、素晴しいレストランのテラス席にErdaが座っている。 応対するHerr Ober! はお行儀が悪く、自分の演技が、これでおしまい…という時、フラッシェに残っているワインを飲んだりする。(…これも演技のうちの筈。)このくらいはまだ許される範囲のような気がする。(そうです、人間を熊にすることはない…)(私は辛辣に批判しているようだが、歌が邪魔をされていなければ、演出としては良い…と思う。どうぞ、歌い手をもっと大切に守ってください、とのみ思う。) ≪2場≫ Brünnhilde の 眠る岩山、ここには、岩壁に素晴しいマルクス、レーニン、スターリン、毛沢東 の4人のレリーフがある。(…これは多分、何の役にもたっていないと思うが…)これはこれで舞台として大変迫力のあるものであった。 Sigfriedと Brünnhilde の 40分もかかる愛の場面 (良く思い出せなくて困っている。)Siegfried が、なんだかあちこち飛び跳ねている記憶はあるのだが、どこにBrünnhilde がいたのか、記憶にない。ただ、愛の2重唱の時、4人のうちのレリーフの下手2人のレリーフが動き、微妙に揺れていた。これは、不思議に面白く、多分照明氏のお手柄だと思う。 (注6) この場面の最後で、私の隣の席のかなり若いドイツ人の女性が、「くすっ」と笑った。(…そりゃ、お笑いになりますよ…) 舞台の上手奥から3匹のワニ(Krokodil)が口をあけて出てくる。人の大きさのWaldvogel(小鳥)が2匹目のワニの口に頭からすっぽりと入る…確か1匹目のワニにも何かが食われていた… これぞ、まさに、考える事禁止!! 考える事をやめて、音楽に集中したいとのみ念じた。 後日の Online Merkerの記事に批評が出ていて「denken verboten」を読んで友人と多いに笑った。(注7) 舞台の緞帳に警告の指示があるのだが、「電話禁止」、「写真禁止」、「映画に撮ること禁止」とあるのだが、2014年のRing の3日目の夜には付け加えなくてはならない「考えること禁止Denken verboten」!!と書かれていた。 最後の音の後、演出にブーが飛んだが、その声は歌手勢が現れると、ブラボーの歓声に変わった。(注8) ----------------------------------- (注6)(注7)(注8)http://www.der-neue-merker.eu/bayreuth-siegfried-denken-verboten/print ------------------------------------ Kirill Petrenco の 指揮とオーケストラは今日も素晴らしい!! Götterdämmerung 8月15日 16:00 Siegfried Lance Ryan Gunter Alejandro Marco-Buhrmester Alberich Oleg Bryjak Hagen Attila Jun Brünnhilde Catherine Foster Gutrune Allison Oakes Waltraute Claudia Mahnke 1.Norn Okka von der Dameru 2.Norn Claudia Mahnke 3.Norn Christiane Kohl Woglinde Mirella Hagen Wellgunde Julia Rutigliano Floßhilde Okka von der Damerau (序幕) 3人の Norn は、大変素敵な声で歌っている。ただ舞台設定があまり良くないと思う。3人のNorn は、糸を木にかけて運命を占っているのだが、全体にこんなに意表を突いた舞台と演出なのに、その演技だけは妙にリアリスティックな感じだった。 (1幕) ≪1場≫ ギービヒ家の長男Gunter、 Hagen 、Gutrune 、Siegfriedの場面。 Siegfried のLance Ryan は大変良く演じていると思った。Hagen は素晴らしい役者である。Gutruneを歌ったAllison Oaker は、この役どころとしてはあまりはっきりした役ではなく、どちらかというと損な役だと思うが、その役を彼女は良くつとめていると思う。 ≪第2場≫ Waltraute の Claudia Mahnke は、素晴しい逸材だと思う。彼女はこの前の場で、2.Norn を歌っていた。ちょっと混乱するが、同じ場面に登場することがないので、こういったことが可能なのだ。 Waltraute とBrünnhildの場面、Brünnhilde の凄まじい怒り… Brünnhilde とSiegfried の 場面。 (2幕)また、不可思議な場面が頭に残っている。Albrech との対話の後、吹き抜けの大きな建物の中で、3階位の所でHagenが 女性を追っている、セクシャルなことを求めている…(これは何?) Siegfried、 Gunter、 Hagen、 Gutrune 、Brünnhilde、 Die Mannen 悲劇に向かう一歩手前である。Brünnhile、Hagen、 Gunter が復讐を誓うのであるが、大変迫力のある、部分的にコーラスを伴った、素晴しく豪華な場面であった。 (3幕) ≪1場≫ ラインの乙女達登場。オープンカーに乗っている。Siegfried をからかっている。Siegfriedは、3人のラインの乙女たちを求めて追いかける。Siegfriedに手を出している(!!)う~ん?どっちが手を出したことになるのか? それにしても、ラインの乙女たちの衣装の見事な派手さ!! かなりセクシャルないでたちで驚くほどであった。 Hagen 、Siegfried 、Die Manner。Hagenが をSiegfried を殺す。 Siegfried の Brünnhilde への最後の別れを歌う、素晴しい詠唱。 ≪2場≫ Gunter、 Gutrune、Hagen、 Brünnhilde Brünnhilde の 詠唱。Brünnhilde は、舞台前面に油を振りかける。素晴らしい渾身の歌だったと思う。その後、演技も舞台の成り行きも、ラストに向けての終わり方がはっきりしないで終えてしまった感がある。映像をも使っていたのだと思うが、「あれ、終わった!!」 舞台の緞帳の前に、歌手が出てくる前にすごい大きな ブオオ~!と言う声が飛んだ…‥ Musikalische Leitung (指揮)のKirill Petrenco は2013年からBayreuth の音楽総監督をしている。Der Ring des Nibelungen の4夜とも、素晴しい音楽を聴かせてくれた。こんなに良い指揮者にして、演出家と、音楽について、舞台について話し合いことはできないのだろうか…一番心に残って疑問に思ったのは演出と音楽との近づき方は考えたことがあるのだろうか、ということだった。 13日のSiegfried の演奏のあくる日、14日が休演日。以前から楽しみにしていた、Euleに行った。 Eule のメニュー一番初めには、"Eile zur Eule und weile"と書かれている。≪急いでEule に行ってゆっくりしよう≫と訳せば良いだろうか。
EuleでWagnerが好んで食べたというBlaue Zipfelを頼んだ。( なかなかの美味でした!) 「so wie sie Wagner immer gern gegessen hat.Ein paar sauere Bratwürste von Schwäbisch Hällischen Schwein mit Zwiebelchen im fränkischen Silvaner-Essigsud gekocht, dazu Steinofenbrot」(Wagner のよく食べた好物。刻んだ玉葱と一緒にシュヴァ―ヴェンのハレの豚肉で出来た2,3本の酸っぱい焼きソーセージをフランケン産シルヴァーナ種の酢で煮、それにSteinofenbrot を一緒に) Bayreuth の Festspiel の期間中に” Die Bayreuher Festspiele und "Juden"1876bis1945 ”の展示会がFestspielhausの中庭で開かれていた。"Verstummte Stimmen"…以前に耳にしたことのある言葉だった。多分2006年ごろに手にした何枚かのCDと関係のあるものだと思った。当時販売されていて今私の手元にあるものは" Verstummte Stimmen.Die Vertreibung der ,Juden' aus der Oper1933 bis 1945”である。今回偶然に出会った展示会の題名は、"Die Bayreuther Festspiel und die ,Juden' 1876 bis 1945 ”である。ほぼ、400頁以上ある厚い本を購入してきた。これから読みたいと思っている。 市野和子Xeniadisさんの先生のRosette Anday女史のお声も、2006年のCDで耳にすることができる。心に騒めくものを感じている。 短期間内に、本当に幸運なことに2つのまったく異なるDer Ring des Nibelungen を聴くことが出来た。帰国してもう一度作品を勉強しなおして(というか、聴かないとわからないことが多い、批評も批評そのものの為に読んではいなくて、細かい部分を思い出すためにと思い、言葉と、音楽の双方から補った。一番真剣に考えたのは、私は今まで、ドイツ語を聴いていなかった…Wagnerの音楽は、言葉を聴かないとわからないと思った…日本人の私たちが例えば落語等を聴いて楽しむように、Bayreuthを訪れているドイツ人はドイツ語で、物語その物と言葉を慈しみ、楽しんでいると、心の底から思った。
Arvena Kongress Hotel の前 Wagner と共に R.Wagner の お墓の前
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