「神々の黄昏」を聴いて
- 妻鳥 純子
- 2017年10月25日
- 読了時間: 2分

10月17日の、国立劇場オペラパレスにて行われた「神々の黄昏」を聴きに行った。
新国立劇場開場20周年記念公演であるそうだ。
思い起こせば、26年前の1991年7月、二期会創立40周年記念(平成3年度文化庁芸術活動特別推進事業)で、財団法人二期会オペラ振興会/文化庁、の主催で「神々の黄昏」が上演された。その時のプログラムを捜した。
総監督:中山悌一
指揮:若杉弘
演出:西澤敬一
私は、第1のノルンを演じた。
今回のオペラパレスの出演者に、日本人では、ノルン3名、ラインの乙女3人、グートルーネ、アルべリヒ、合唱団の人々が出演されていた。アルべリヒの島村武男氏は、26年前の二期会公演にも出演されていた。
今回の公演の日本人演者、グートルーネ、アルべリヒ、ラインの乙女3人は、大変良かった。
オペラを聴いた印象を書きたいと思う。
プロローグ:3人のノルンの会話で始まる。3人とも、歌声とドイツ語に、核(Kern)が無くて、音楽が非常に平坦であった。続くブリュンヒルデとジークフリートの場面。ブリュンヒルデは、初め大変声の鳴り方が良くなくて、楽日なので(初日から6回目)かなり疲労しているのではないかと思った。が、全幕を通して大変熱演していたが、声の形作る素晴らしいラインは、終始一貫して聴くことができなかった。大変残念な想いを抱いた。
ジークフリートを演じたシュテファン・グールド(Stephen Gould)氏は、多分現在最高のヘルデンテノールだと思う。
どの幕でも英雄テノールで、第1幕の薬を飲まされて、人物の判別が出来ない場面のジークフリートも、それになっていた。
第3幕第1景、狩りの途上で、ジークフリートが、ラインの乙女達に出会う場面、この乙女達のアンサンブルは大変見事であった。美しい…‥!
ジークフリートの圧巻の場面は、3幕第2景、ハーゲンに思い出し薬を酒杯に入れられ、ブリュンヒルデに接吻したことを語る場面の素晴らしい詠唱である…‥オペラパレスを出た後、そして今も、この声が耳の奥に残っている。…‥
感動と共に、いろいろな想いを抱いた Götterdämmerung であった。
ただオーケストラの音楽が全体に大変音量が大きいこと、時に音を外すこと、音楽にタイトさが無いことが気にかかった。日本人の声楽家、殊にノルン3姉妹、オーケストラの音にも核(Kern)が感じられないことが多く、大変残念に思った。
どの国の出身の声楽家が歌っている、ということを言うことが良いことだとは思わない。が、日本のオペラ歌劇場の20周年の記念すべき公演である。
未来のために敢えて提言したいと思う。Siegfried(ジークリート) やBrünhilde(ブリュンヒルデ)を演じる歌手が、日本人だから、というのではなく、出てくることを切に期待したい。
Comments